オンライン寄付サイト Invest in the Future

バックナンバー

私が支えられたとき

第1回 棋士:羽生善治さん
棋士は個人事業主 ファンの支えがないと続きません

 Give One(ギブワン)では、各界で活躍する方々に、苦しいとき、壁に突き当たったときなどに誰かに支えられた経験、支えられたことで自分が変わったり、励まされた経験を語っていただくコーナーを始めます。支え、支えられることの価値や絆の大切さを実感できる場にしたいと思います。

 原則として2か月に1回、登場して下さった方に次の方を紹介していただく「リレーインタビュー形式」で進めます。

 第1回は、棋士の羽生善治さん(41)です。羽生さんは、20代のころから将棋界のトップを走り続けています。実は、長らくギブワンとギブワンを通じていくつものNPOを支えて下さっているサポーターの一人です。


羽生善治さん
はぶ・よしはる 昭和45年9月27日埼玉県所沢市出身。6歳で将棋を覚える。12歳で6級で二上達也九段に入門。昭和60年四段に昇段。プロとなる。平成元年初タイトル竜王を獲得。平成8年七冠王となる。永世名人、永世棋聖、永世王位、永世棋王、永世王将、名誉王座の資格を持つ。著書に羽生の頭脳1-10(日本将棋連盟)、大局観(角川書店)等がある。

 私が最初に将棋を覚えたのは小学1年生の時ですが、それからのことを今振り返ると、人との巡り合わせというかタイミングが、非常に自分にとって幸運だったと思えます。それは、後になって気づくことが多いのです。

 たとえば、当時の私の家では将棋をやる家族はいませんでした。父はルール程度は知っていましたが、アウトドア派ですのであまりやりませんでした。将棋を知ったのは、1年生の時にたまたま同級生の友達が教えてくれたのが最初です。2年生になって道場に通い始めるのですが、それもたまたま、その方が脱サラなさって将棋道場を始めたばかりで子供の大会をやるというのを知ったので、やろう、と思ったのです。

 師匠についてもそうです。私の師匠の二上達也先生が、たまたまその道場の師範というか顧問のような形でいらっしゃったので、紹介いただいて入門できました。その当時、仮に師匠を自分で探すとしても、どんな師匠がよいのかなんて分かりませんよね。でも、そうやってたまたま紹介いただいた師匠がよい方だったのです。

 こういう巡り合わせはかなり幸運だったと思います。どれか一つが欠けても、棋士にはなれなかったでしょうし、今の自分はないはずですから。


 ≪若くして史上初の7冠王を達成し、通算の勝率は7割を超えています。難しい局面を次々と打開していく姿から、将棋以外の世界でもその「決断力」の秘密に興味を持たれるほどですが、自ら「幸運」と言う巡り合わせとともに、回りの支えも大きな力となるようです≫


羽生善治さん

 たくさんのファンの方からいろいろ励まされますが、10年、15年とずっと応援して下さる方の中には、私の調子が悪くなると、地元で採れたお米や野菜を「これでも食べて元気になってください」という手紙とともに送って下さる方もいます。もしかしたら、私自身よりも心配して下さっているのかな、と思うくらいです。

 その中でも、千葉、群馬、北海道にお住いの3人の方には、随分と熱心に応援してもらっています。いずれも、多分、80歳を超えた方ばかりですが、その中には、対局が終わるたびに、自筆の私の似顔絵を添えた電報を打ってくれる方がいます。本当にほとんど毎回なので、来ないと逆に「具合を悪くされたのかな」と心配してしまいます。

 将棋の世界は、棋士は将棋連盟という組織に属していますが、基本的に個人事業主の集まりのようなところがあります。対局と連盟主催の行事以外のところでどういうことをやるかは、ファンとの接し方も含めて個人の裁量に任されています。

 私は、特にお世話になったファンの方を、タイトルの就位パーティーにもご招待します。もちろん、ご家族、知人の方も一緒にどうぞ、という形で。そうすると、お互い家族ぐるみのような感じになります。実際、向こうは、例えば自分の子どもか孫のように思ってくださっているのかもしれません。私が小学生の頃からご存じのようですから。

 多分、将棋はファンとの距離が近いのだと思います。教室を開いて教えている棋士もいますし、公開の対局では、顔見知りの方が来ているとすぐに分かります。


 ≪ファンの支えというのは、いろいろな分野で聞くことがありますが、将棋の世界では少し特別なようです。羽生さんクラスになれば年間平均で80局程度の対戦があります。戦う時はいつも一人です≫


羽生善治さん

 将棋の世界は個人競技なので、負けたら自分の責任でそれがすべてという面があります。ただ、それだけがモチベーションだと長く続かないです。個人の動機とか個人の目標とか、こうなりたいという願望の形とか、それだけだと続かない、そんなに強い継続するものにはならないです。確かに、(ファンの応援などが)つらいというか重いという風に思うことが時にはあるのですが、でも、長い目で見た時には「非常に支えられているんだな」という感じはあります。

 その証左ではないですが、自分自身の状態を見るのに分かりやすい言葉があります。誰かに「頑張ってください」と言われた時に、どういう風に自分が受け止めるか、で分かるんです。「ありがとうございます、頑張ります」と言える時と、「言われなくても頑張っています」と思う時が正直あります。素直にそれを受け止める時はいい状態だし、そうでない時は何か自分自身の中でずれているところがあるというか、ちょっと直さなければならないところがある場合が非常に多いです。私にとっては、調子を見る非常に分かりやすいバロメーターです。

 でも、20代の頃は、こういうことを考えることもなかったです。気づいたのは30代になってからでした。


 ≪お話を聞いたのは、第59期王座戦第1局と第52期王位戦第7局の間の、ある日の午後でした。その後、王位戦の第7局で勝ってタイトルを奪取し、故大山康治十五世名人が持つタイトル獲得数最多記録の80に並びました≫


 対局の日程も、それほど前に決まることはないし、このインタビューのように将棋以外のスケジュールも何か月も前から決まるものはないですよね。実は、その日暮らしに近い感じでして、何日も前からある対局に照準を合わせて調整、などということはしにくいです。

 気分転換に利用していた水泳は、最近、少しご無沙汰していまして、今は歩くことです。対局の日も、渋谷駅から将棋会館まで20分ほど歩いて来ることもあります。頭の中を整理整頓したい時に、歩くのはいいですね。

2011年10月14日掲載

(聞き手:ギブワンスタッフ 前田純弘)

 ★次回はサッカー日本代表前監督の岡田武史さんの予定です。

はじめての方へ

Give One(ギブワン)は 2001年にオープンしたオンライン寄付サイトの先駆けです。
審査済みの信頼できる団体・寄付プロジェクトを紹介しています。
メールアドレスとパスワードのみのご登録で、24時間365日いつでもご利用いただけます。

利用方法

GiveOne(ギブワン)とは

運営団体について

寄付決済の流れ

登録団体の選定について

googleロゴ
STAFF BLOG
パブリックリソース財団
リンクのお願い

メルマガ登録 | お問い合わせ | サイトマップ | FAQ | 特定商取引法に基づく表記 | プライバシーポリシー | セキュリティについて

Copyright © Public Resource Foundation. All Rights Reserved.