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ドメスティックバイオレンス(DV)や虐待・レイプ・セクハラなど、
女性や子どもへの暴力と取り組む活動のさまざまな局面で、被害者を支援する人たちの資質が
問われています。「NPO法人 女性の安全と健康のための支援教育センター」(以下:支援教育センター)は、
1999年に設立され、日本で唯一、SANE(Sexual Assault Nurse Examiner:性暴力被害者支援看護職)
養成講座を実施するなど、女性・子どもへの暴力と取り組む支援者を支援するユニークな団体です。
三井富美代事務局長にお話をうかがいました。
女性の安全と健康のための支援教育センター[東京都]
支援者を第2の加害者にさせない
Q:そもそも「支援者」とは何をする人で、その人たちをどう支援するのですか?
三井:性暴力被害にあった女性たちは、被害によって心身の傷を負っています。
そしてそれを訴える場である病院や警察、行政窓口、女性センター、民間シェルターなどにおいて、
診察を受けたり、被害の状況を説明したりする際に、改めて自分の受けた被害と直面させられます。
担当者の対応いかんで、彼女たちはさらなる傷を負うことも少なくありません。地域によっては、
専門の担当部署がなかったり、担当者に男性しかいなかったりということもあります。
「あなたにも悪いところがあったのでは?」とお説教的になったり、「どうして逃げなかったの?」と
責めたり、「かわいそう」という上からの態度で接したり……。
決して興味本位で話を聞くわけではないとしても、担当者の視線ひとつで被害者の口は閉ざされ、
さらに深く傷つくこともあるかもしれません。
被害者に対して支援者は、“強者”であるという立場を自戒することが、2次加害
(支援の際に新たに被害を加えてしまうこと)を避けるためには何よりも必要なことです。
“真に適切な支援とは”を考えたとき、そのための専門的な訓練の場やネットワークが日本には本当に
少ないのです。こうした現実に、看護師、助産師、保健師、医師などの医療関係者、
弁護士などの法律関係者、民間シェルターや公的相談機関の相談員、女性運動や教育に携わってきた者など、
それぞれの分野で支援を経験してきた女性たちが集まって、支援教育センターを立ち上げました。
Q:具体的にはどのような活動をされていますか?
三井:中心事業は、被害にあった人の人権を尊重し、その人の希望と必要に応じて適切な支援を
提供できる支援者の養成を目的とする研修講座の開催です。
さらに、それぞれの分野の人々が連携して活動できるシステム(ネットワーク)づくりにも
取り組んでいます。個人やグループはもとより、行政や関係機関とも積極的に手を携えて活動しています。
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研修講座の様子。定員が限られ、キャンセル待ちする会員もいる
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現在、支援者のための研修講座には3つのコースがあります。A(基礎)コース・
B(基礎修了者対象)コースは、相談員、ソーシャルワーカー、児童福祉司、精神保健福祉士、
社会福祉士、警察官などの専門職、民間シェルタースタッフなど支援にあたる人たちや、
支援者を目指す被害体験者の人たちを対象にした講座で、DVをはじめとした性暴力被害について、
社会、家族、人権、医療、福祉ほかあらゆる面からのアプローチをします。
講師は長年この問題に取り組んできた専門職や支援経験者、被害体験をもつ当事者などです。
特徴的なのは、看護師、助産師、保健師の看護職を対象としたSANEコースです。
SANEはアメリカ合衆国とカナダで専門職として資格化され、司法機関等と連携して活躍する専門職です。
性暴力被害にあった人の医療ケアには、専門的知識と技術をもつトレーニングされた人たちが
チームを組んであたるのがベストであり、医療現場での2次加害を避け、本人の意思にしたがって告訴
などの法的措置に備えた証拠採取や記録を残すことができるという考えに基づいて資格化されました。
支援教育センターでは、日本でのSANE普及を目指し、カナダで実施されているSANE教育プログラムを
基にして日本向けプログラムを開発、日本で“唯一”のSANE養成講座を実施しています。
2006年の開講以来、2010年春現在で約230名の修了生が全国にいます。医療現場にいる方々にこそ、
被害者の痛みを知って欲しいと思います。
支援のためのネットワークづくり
Q:ネットワークはどのようなものですか?
三井:ネットワークについては2つの視点からその必要性をとらえて取り組んでいます。
被害者に必要なサポートは医療分野だけにとどまりません。緊急時の相談、支援や一時的な避難場所
としてのシェルターや、生活再建のための支援など、さまざまなサポートが必要です。
まずはそうした拠点を各地に作ります。
地方では被害者がサポートを求める施設が少なく、支援者もひとりだけということも珍しくありません。
隣にいる相談員や上司がDVや性暴力に理解がなく2次加害をしてしまいそうな人だったとしたら、
支援者はひとりで頑張ることに限界を感じるとともに、燃え尽きてしまう危険も抱えています。
支援者自身が地域で孤立しないためにも、ネットワークは必要と考えています。
研修講座をとおして、自分の専門以外にどのようなサポートがあるかを知るとともに、実際に参加者
同士、専門分野を越えてともに学ぶことで、問題の共有、連帯感をもつことができます。
さらには、近隣地域に仲間がいることを知ることもできます。「研修講座で仲間に会えるとほっとする」
と、繰り返し参加される方の姿もみられ、この意味でのネットワークの存在はかなり大きいと
実感しています。
暴力を生み出す構造を崩したい
Q:今後の展開についてお話しください。
三井:今後、Bコース、SANEコースの修了者を対象に、Cコースとして、
SART(性暴力被害者支援チーム)コーディネータ養成講座の開設も考えています。
性暴力被害者の支援には、医療機関、警察など司法関係、弁護士、児童福祉司、
地域の行政や女性センターの相談員などで被害者支援のチーム作りが不可欠です。
しかしながら、それらをまとめる役割を担う機関はありません。こうした関係者をまとめて
支援チームをつくる担い手(コーディネータ)の養成を目指す講座です。
さらには、その一環として性暴力被害者支援のためのホットラインを、24時間体制で
開設したいと考えています。
性暴力に関しての2次加害、偏見はなかなかなくならず、事件が起こるたびに被害者は大変な思いを
しています。私たちは、なぜ女性や子どもに暴力がふるわれるのか、
そのことを考えなければなりません。
問題は社会構造のなかにある女性差別や弱いものに対する人権侵害であること、自分も被害者
(場合によっては加害者)になりうるのであって他人事ではないことを知っていただければと思います。
支援教育センターでは、被害にあった人たちが被害を訴えて相談しやすい環境をつくることで、
被害そのものも少なくなっていくと考えています。私たちはこうした活動を続けていくことで、
暴力を生みだし、それを助長し、容認してきた社会の根深い構造を突き崩すという大きな目標に
向かって進んでいます。
「性」の問題は深くて難しい。性被害について目をつむって見ないふりをしてしまうことは
簡単かもしれません。しかし、「性」は人間の生きることに直接かかわる大切なテーマです。
口にしにくいことの代表例のように考えられている「性」ですが、口に出して考えることが
広まればいいと思っています。
一般の方々向けの公開講座も年数回行っていますので、ぜひご参加ください。
2011年11月21日掲載
(インタビュー:佐伯秀子・ギブワン編集者)
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